1955年に誕生した自民党は2009年の政権交代まで、どのような責任を果たし、なにを間違えたのか。自民党神奈川県連・所属の国政調査会メンバーは自民党の“過去の政策”を検証しました。私が担当した「社会資本整備」ならびに「財政」分野の検証を投稿します。

【社会資本整備】

1.「社会資本整備」とは何か
社会資本とは「人々が生活を営み、経済・社会活動を行うのに必要不可欠な基盤となる施設」であり、一般的には、道路・鉄道・港湾・空港等の交通基盤施設、農林漁業基盤施設等の生産基盤施設、上下水道・都市公園・教育・文化・福祉厚生施設等の生活基盤施設、河川・砂防・海岸等の国土保全防災施設、等の総称である。
日本においては、欧米諸国に著しく遅れていたこれらの社会資本を整備するため、明治新政府による鉄道に始まり、戦後は高度経済成長を支える産業基盤、昭和40年代半ばになると田中角栄氏の日本列島改造論と共に、生活基盤の整備にも重点がおかれた。
平成2年、貿易摩擦解消のための日米構造協議を機に「公共投資基本計画」が策定され、13年間にわたり公共事業への総投資額630兆円が確保され、バブル崩壊後の景気対策として、国及び地方自治体は多額の公共事業を行った。
しかし、平成14年、小泉政権はこの基本計画を廃止し「構造改革と経済財政の中期展望」を閣議決定する。社会資本整備は真に必要な分野へ投資を集中し、建設から運営について可能な限り民間に任せることを基本にハードからソフトへの転換を努力するとした。これに基づき、国の公共事業関係費は毎年3%削減し道路等の特定財源についてはその在り方を見直す方向とした。
平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機により、麻生政権は大規模な景気対策を講ずるべく、道路特定財源から地方への財源を捻出した。
現在、日本の社会資本ストックは、道路125万㎞、河川12万㎞、海岸3.5万㎞、下水道39万㎞、その総額は約700兆円(道路234兆円、治水70兆円、海岸6兆円、下水道46兆円、港湾4兆円、空港43兆円、公共賃貸住宅29兆円等)に上る。

Ⓐ.空港整備
第一次空港整備五箇年計画が開始された昭和42年時点で既に58空港が存在したが、現在98空港が整備されている。
拠点空港28(会社管理空港は成田・中部・関西の3空港、国管理空港20、特定地方管理空港5)、地方管理空港54、その他の空港9、共用空港7であるが、空港別収支はその大半が赤字である。
平成15年、社会資本整備重点計画では、空港整備は離島を除き新設を抑制するとし、空港政策が整備から運営・運用へシフトしつつある。
①東京国際空港(羽田)の整備
羽田の発着枠は沖合展開事業により拡大されてきたが、能力の限界に達し、平成16年度から再拡張事業により4本目の滑走路の整備が進められた。国際線地区についてもPFI(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)手法を活用し平成22年10月末に供用を開始、羽田の本格的な国際化が実現した。
②成田国際空港の整備
昭和53年、日本の表玄関として開港したが、平成14年に暫定平行滑走路が供用した後も、航空会社からの乗り入れ要請に対応できない状況にあった。地元自治体の理解を得、平成18年、平行滑走路の2,500m化を着工し、平成21年10月に供用を開始した。
③関西国際空港・中部国際空港の整備
関空は、平成19年の2本目の滑走路の供用により、日本初の完全24時間運用可能な国際ハブ空港となった。平成21年4月には二期国際貨物地区の供用を開始するとともに、連絡橋道路の料金引き下げによるアクセスの改善が図られた。
中部空港では、国際ビジネスジェット格納庫の整備などを通じ、需要拡大に取り組んでいる。

Ⓑ.港湾整備
全国997港湾(うち重要港湾102、特定重要港湾23、地方港湾871)が整備されている。
平成17年にスーパー中枢港湾(京浜港・伊勢湾・阪神港)、22年に国際コンテナ戦略港湾(京浜港・阪神港)を指定した。

Ⓒ.道路整備
平成21年時点、日本の道路の総延長は約126万6,800㎞、高速自動車国道9,100㎞、一般国道6万7,000㎞、都道府県道14万2,500㎞、市町村道104万8,200㎞である。
戦後のモータリゼーションに対応する道路整備のためには、一般財源以外の財源を必要とした。そこで、昭和29年、第一次道路整備五箇年計画とともに、①特定財源制度が創設され、昭和31年、日本道路公団が設立され、②有料道路制度を確立した。
本州四国連絡橋3ルートの建設では4兆円超の負債を残し、東京湾アクアラインには1兆4,000億円の巨費を投じた。
①特定財源制度
道路特定財源制度は、受益者である自動車利用者が道路整備のための費用を負担する制度であり、道路特定財源諸税(昭和29年揮発油税、昭和30年地方道路譲与税、昭和31年軽油取引税、昭和41年石油ガス税・石油ガス譲与税、昭和43年自動車取得税、昭和46年自動車重量税・自動車重量贈与税)を創設してきたが、平成21年、麻生政権の下、道路特定財源は一般財源化された。
②有料道路制度
高速自動車国道において昭和31年からの路線別採算方式を改め、昭和47年、料金プール制が導入された。
平成17年、道路関係四公団は約40兆円の有利子負債を返済しつつ、必要な道路を建設することを目的に民営化された。

2.「社会資本整備」の評価
戦後、社会資本整備は急ピッチで進み、昭和43年には国民総生産(GNP)も世界2位となり、国民生活は飛躍的に向上した。
その後も「国土の均衡ある発展」を目指し、全国津々浦々に経済・社会活動の礎は築かれていく。
昭和40年代半ば以降、社会資本による限界生産性は民間資本と同様、整備が進むにつれ、徐々に低下していく。東海道新幹線・東名高速といった大動脈である交通基盤や、上下水道のような生活の基幹的事業から、利用頻度の低い、利便性の限られた事業へシフトし、また、事業の長期化によってコストが膨らんでいった。公益性と費用対効果が錯綜する臨界期であったと考える。
しかし、昭和の終わりから平成の始めのバブルの生成・崩壊過程では、国・地方ともに歳出の重心は公共投資に置かれた。公共事業自体が目的化され、社会資本としての体系的な機能を度外視し、地域への景気刺激、利益誘導が優先された。それに絡む談合、天下りなど政官業癒着が顕在化したことは看過できない。
その後、地価上昇・人口増加を前提とした右肩上がりの成長モデルを改められず、甘い需要予測を信奉するなど、人口減少・デフレ社会への政策転換が遅れた。
総じて、私達は時代の潮流、変化に、結果として適応できなかった。
災害対策やバリアフリー化など、着実に公共財を積み重ね、評価を得るところもある。その一方で、国際ハブ空港・コンテナ港湾の競争力は培われぬまま、全国に98の空港、997の港を点在させることになった。都市圏の渋滞は解消されないが、地方では空き過ぎる道路が出来上がっている。必要のない空港、過剰なまでの港、無駄な道路へ散財し、散在させてしまったこと、そして、それらを今後維持していく将来負担を残してしまった。「“公共事業”=“無駄・悪”」というイメージを植えつけてしまった責任は大きい。
全国にインフラが満遍なく点在することが、均衡に発展したことでもなく、国際競争力が高まったわけでもないと自省する。

3.「社会資本整備」の課題1.「社会資本整備」とは何か
財政出動による多くの公共事業が一過性の景気対策に過ぎず、機能の期待効果は望めず、将来負担を残すことは証明された。日本の発散的な長期債務、少子高齢化による社会保障費の伸びを鑑みると、社会資本整備への投資は極めて厳しい状況にある。
限られた社会基盤整備予算は、国際競争・産業発展に資する機能強化と生活保全に死活的なものだけに、厳選して使われるべきである。選択と集中が要諦である。

4.「社会資本整備」のあるべき姿
社会資本の中でも、空港・港湾・道路は、もはやハードではなくソフトである。既存するインフラを基に、空路・航路・陸路を有機的に結合させる交通・物流網を構築しなければならない。既存施設の効率的な運用と運営が要諦であり、期待効果が上がらず維持費が嵩むものを放置しておく余裕はない。転用や廃止、整備途中の撤退も視野に入れるべきであろう。
受益と負担を明確にし経営的観点を備えるため、整備・運営の主体を市場・民営化、もしくは地方分権へと加速したい。従って、特別会計制度を解体し、内部でプール・補助する仕組みから脱却する。
交通基盤整備は、人々の営みの時空を制御する基礎的条件であり、ダイナミックに新しい地図を描くことも可能であろう。しかし、我々はそれが未来への投資か負債かを見極めなければならない。建設中の第二東名高速道路は見直すべきである。

Ⓐ.空港整備
羽田・成田空港は首都圏空港として一体的活用を推進するため、両空港間のアクセスを改善しなければならない。関空は1兆3,000億円超の負債を抱えたバランスシートの抜本的な改善、伊丹空港との統廃合を含めた早期の関係整理が必要である。極東に位置する日本の空港は、地政学的にも太平洋路線に重心を置くべきである。にもかかわらず羽田・成田・関空の着陸料は米国やアジアの主要空港の数倍であり、国際競争下では運用面での補助制度が必要である。

Ⓑ.港湾整備
スーパー中枢港湾に集中投資し、急拡大しているアジア・欧米間航路の国際コンテナ貨物を取り込まなくてはいけない。しかし、日本各地の貨物でさえ、特に日本海側の貨物は地方港から釜山港へ集荷され、欧米への基幹航路へ積替えされている。まずは、国内貨物が賄える日本発着の基幹航路を保持しなければならない。そしてさらに、アジアの中で地政学的に優位である北中南米航路の国際コンテナ港湾を目指すべきである。従って、国内における海上輸送、鉄道・トラックの陸上輸送との連携を強化すること、アジア諸港とのコスト・サービス競争に負けないために港湾運営を効率化、民営化することが必要である。

Ⓒ.道路整備
三大都市圏の渋滞解消に環状道路、ならびに基幹ネットワークの国土ミッシングリンクを結合させる整備に特化する。高速道路においては、受益者負担の考えに基づいた料金体系を設定する。

【財政】

1.「財政」とは何か
国として必要な支出である「歳出」を、現在の税金と将来世代からの借金である国債からなる「歳入」でどう賄うかが財政政策である。「歳出」面では、何が本当に必要な支出であるかを精査し、「歳入」面では、税金の内訳(消費税・所得税・法人税等の直間比率)をどうするか、国債という形で将来世代にどの位の負担を求めることが可能なのか、この組み合わせを最適化する。このことを通じて、必要なサービスを提供しつつ将来の国民一人ひとりの負担を最小限にすることが財政政策の最終的な目的である。
現在、歳出のうち国債費、地方交付税、社会保障費で概ね7割を占め、歳入の半分近くは国債により充てられている。
日本の財政規模は戦後から平成12年度までほぼ一貫し拡大してきた。増加する歳出は税収だけでは賄いきれず、昭和40年度補正予算で戦後初の歳入補填債を発行、翌41年度からは建設国債が発行される。さらに昭和50年度から特例公債を発行。昭和55年鈴木善幸内閣の増税なき財政再建、昭和57年からの中曽根康弘内閣でのゼロ・シーリング、マイナス・シーリング導入により財政収支は改善する。平成元年には消費税が導入され、2年度からの4年間、特例公債依存を脱却した。
しかし、税収は平成2年度のピークからバブル崩壊後、低調傾向となり、6年度から特例公債の発行が再開され、平成10年には消費税率を5%に引き上げた。平成13年から18年の小泉純一郎内閣の聖域なき構造改革による歳出抑制と国債発行枠の設定、そして、いざなみ景気により財政収支は改善へと進んだ。その後、平成20年9月リーマン・ショックを受け経済対策をおこない、収支は再び悪化する。平成22年度からは当初予算で公債金収入が税収を上回る状況である。
日本の財政収支は昭和40年から恒常的に赤字であり、平成2年度からの22年間で公債残高が約500兆円増加し、平成23年度末には667兆円、国民1人当たり約521万円に上る。

2.「財政」の評価
日本の国民負担率は主要先進国の中で低いにもかかわらず、社会基盤整備や教育、社会保障において高いサービスを提供することができた。その反面、歳出に見合う歳入改革を先送りし、歳入に見合う歳出改革を怠たり、将来に巨額の借金を残してしまった。歳入面では直間比率や特定財源の見直し、歳出面では公共投資の削減、医療制度改革など評価されるものもある。
また、小泉内閣では新規国債発行額を30兆円に抑制する方針を示し、平成18年度には27.5兆円を達成し、翌19年度の安倍晋三内閣では25.4兆円まで圧縮され、プライマリー・バランスの均衡まであと一歩まで近づけ、成果をあげた。
しかし、リーマン・ショック後、再び財政規律は緩み、平成21年度当初予算で33.3兆円の新規発行額が補正後53.5兆円と変化した。さらに政権交代後、金融危機以前の水準に戻すことはせず、平成22年度以降、当初予算で44.3兆円が維持された。
それ故に、財政収支の赤字幅はG7のうち米国の次に悪く、債務残高は突出して悪化している。欧州債務危機の火種であるPIIGS諸国と比較しても大差はない。日本の長期国債の格付けは米格付け機関スタンダード&プアーズにおいて平成13年時のAAAから23年1月にAA-、同年4月にネガティブの見通しへと低下した。
政治家は日本国債を国内投資家が9割超保有するという自国偏重に甘え、国民負担を極度に忌避し将来から借金するみちを国民とともに選び、財政再建へ転換する時期を逸したと言えよう。

3.「財政」の課題
プライマリー・バランスを黒字化する着実な行程を喫緊に示さなければならない。
高齢化の進行により社会保障費は歳出の約3割に達し、今後も特別会計を含め毎年数兆円単位で嵩んでいく。保険料と税を財源に世代を越え、どう給付し循環させていくのかを明らかにし、国民の不信を払拭しなければならない。同じく約2割を占める地方交付税交付金等、地方への配分を絞り込むとともに、地方は自立した税財源の確立をさらに進めていく必要がある。また、同じく約1割を占める国債利払い費の抑制には金利動向が死活的な問題となる。民間の給与水準に比べ高止まりしている公務員の人件費を見直すのは当然である。
国民負担率は約4割、財政赤字を加えた潜在的負担率は約5割であり、現在の受益の約2割は将来世代が支払ってくれている。世代会計(世代別の生涯の受益と負担の差額)で示すと70歳以上はプラス3,000万円、20歳未満はマイナス7,000万円といわれ、世代間格差は著しい。その差額を埋めるには消費増税が避けられない。
加えて、肥大化した特別会計は透明性を確保し、剰余金等の扱いを明瞭にすべきである。
従前の「国と地方」「現在と将来」「税と保険料」での再配分は限界であり、巨額債務を抱えた政府の資金循環には緻密な施策が重要であると考える。

4.「財政」のあるべき姿
プライマリー・バランスが均衡しても債務残高は増え続けてしまう。減らすには、政策的経費に利払い費を加えた財政収支の黒字化を達成しなければならない。また、名目金利が名目成長率を上回ると債務残高の対GDP比は増加し、残高は発散的となり持続可能性は崩れる。名目金利が名目成長率以下になることが必須である。
貯蓄率は1970年代の20%超から90年代の10%台、近年では数%にまで低下した。将来、公的債務が個人金融資産を超え、国債の国内消化構造が崩れると懸念される。その場合、国債の格付けは容赦なく引き下げられ、実体経済と乖離した金利上昇に転化しかねない。金利変動リスクに備え、デュレーション(国債の平均残存年限)の制御等、精度の高い国債管理政策が求められる。
これらなくして、日本のバランスシートの債務超過が解消されることはない。
財政出動か財政規律か、その時代時代で真剣に議論はなされた。しかし、財政再建への軌道を逸脱した顛末、世代間格差を生み、将来への負担を残してしまった。私達は私達の時代で過去の責務も果たさなければならないと痛感する。過去に本来お願いし民間部門から政府へ移転してもらうべきであった資本は今、民間部門のストックに存在している。その一部である金融資産に対し相続税の操作も思案したい。
今後100年の中で財政に最も余裕があるのは今である。私達は世界で最初に経験する少子高齢社会を乗り越える。借金をつくるか返済するか、破綻を回避するのか破綻後やり直すのか、今が岐路である。

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