こんにちは、中山のりひろです。米中への自由貿易を進めるための経済取引ルールについて提言致します。ご一読頂けましたら、幸いです。

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 世界経済は現在、制裁関税による米中分断(デカップリング)と、輸出入管理強化による米中遮断(ブロック化)が同時に進行しつつある。

 米国は、経常収支の不均衡を是正するため、2018年から中国製品に対する輸入関税を引き上げ、中国が対米関税で応酬する状態に陥っている。

 中国は2015年、中国製造2025によりイノベーション駆動、環境保全型発展、構造最適化等の方針のもと、次世代情報技術や省エネ新エネ自動車、バイオ医薬をはじめとする戦略10分野23項目での製造強国入りへの意欲を示した。他方、米国は、中国による強制的な技術移転、知的財産権の侵害、国有企業への優遇策等を憂慮し、中国の戦略分野に対峙するかたちで、それらを網羅する米・国防権限法(NDAA)2019において人工知能やロボット、測位技術、先進監視技術等14分類47項目の流出を防ぐ措置を強めている。

 また、今年8月からNDAA889条による「特定の通信機器および映像監視サービス(ファーウェイ・ZTE)の利用禁止」、さらに来年8月からは「利用団体との契約禁止」を運用する。

 このような米中貿易摩擦およびサプライチェーンリスクによる日米、日中、米中間のアクセスの不確実性が、企業の活動を躊躇させ国際連携の組み換えを余儀なくし、今後、世界経済が萎縮する蓋然性は否定できない。

 とりわけ、日本企業にとって米中の巨大市場や生産拠点は経営上の根幹であり、米中双方での展開は不可避である。本邦企業が両国へアクセスするためには、①安全保障を脅かさない、特にデュアルユース輸出に係る米国輸出規制EARおよび先端・基盤技術輸出に係る輸出管理改革法ECRAへの抵触を避けるための管理、製品の分類が要諦である。あわせて、②経営組織において、機微技術、知的財産が侵食されないことはもとより、意思決定に関与されないよう、セキュリティクリアランスを確保し、米側組織と中国側組織を分離するファイヤーウォールを施すガバナンスへと改編することも必要となろう。

 今次は、日米中に影響が大きく、特にサプライチェーンの経済取引が交錯し、技術レベルも多種多様である、自動車と半導体の産業分野について言及する。

 中国が推し進める電気自動車(EV)は、走行時にCO2を排出しないが、発電から走行まで(Well to Wheel)含めたCO2排出量は、エンジン車よりも多くなると考えられ、中国はNEV規制(新エネルギー車を一定比率生産することを義務付ける環境規制)の見直しを模索している。ハイブリッド車をはじめ超低燃費ガソリン車の部品等関連産業、雇用による経済効果は、日中ともにEVよりも大きい。CO2のみならずPM2.5、SOx(硫黄酸化物)の排出量削減に向け、超低燃費ガソリン車を米NDAAに統制されない技術として、日米中で広く活用することは一考に値する。

 また、中国における半導体の需要は急増することが見込まれる。中国では水不足が顕在化しており、半導体製造過程で大量の「水」消費は、水資源を枯渇し環境問題をより深刻化させる。一方、水資源が豊富な日本国内での製造(前工程)工場は余剰している。我が国から中国への半導体供給の可否について、米NDAAに規制されない製品、製造装置を早急に明確にし、半導体メーカーの経営上の資源配分の予見可能性を高めることに努めなければならない。

 さらに、前述の①および②を準拠する企業においては、中国に対し中国からの送金規制に制約されないことを求める。

 米中との安全保障を鑑みた上で、環境問題に資する新たな経済取引ルールを構築し、自由貿易の進展の一助になればと、以上提言する。

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