こんにちは、中山のりひろです。

 2月、ルール形成戦略議員連盟は政府へ「デジタル人民元への対応」について提言致しました。

 そして3月、この政策の国際環境を整えるため、私は経済および安全保障を担当する外務大臣政務官として日本政府を代表し、ワシントンD.C.を訪ね、米国政府と議会へ交渉を行なって参りました。

 以下、私が議員連盟の事務局長として作成した提言の趣旨です。ご一読くださいましたら幸いです。

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 基軸通貨体制、国際決済システム、そして金融に付随するデータ駆動型世界への覇権的挑戦が始まっている。

 米フェイスブックが構想する通貨リブラは、米ドル、ユーロ、英ポンドを含めた世界主要5通貨のバスケットに裏付けられたステーブルコインとして、ブロックチェーン技術を礎にした世界共通の暗号資産である。24時間リーズナブルに送金可能で、金融インフラが脆弱な地域や金融口座を保有していない層への金融包摂に資する。しかも約27億人が利用するプラットフォーマーは個人情報や生活データを扱っており、リブラを介し多様なサービスが提供されると考えられる。

 世界は異なる政治体制、金融経済政策で動いている。一国或いは限られた地域の体系に操縦される通貨よりも、越境し分散する資産を背景に担保された通貨のほうが、価値は安定し信用力が高まることは否定できない。他方、各国地域の規制当局・中央銀行からは金融政策など規制が行き届かないので、リブラに対して懸念が示された。

 もとより各国中央銀行による法定通貨は、クレジット・デビットカードによる決裁、そしてスマートフォンも金融インフラの一端となり様々な形式で電子マネーへ変換され、デジタル化が施されている。

 殊に中国においては、中国版プラットフォーマーであるアリババ(アント・フィナンシャル)やテンセントのような民間企業がキャッシュレス決裁の市場を席巻し、リープフロッグ型発展を遂げ、個人情報はじめ消費動向を採取蓄積している。中国人民銀行はこれを憂慮し、プラットフォーマーをパートナーとする中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)、いわゆるデジタル人民元を発行する段階にきている。すなわち中国人民銀行は、すべての資金移動(金流)を監視し、付随する商流・物流データを捕捉することが可能となり、例えば人民元の国外流出(キャピタルフライト)を妨げる金融措置を高い精度でおこなえるようになる。さらにデジタル人民元は、一帯一路圏において道路・港湾・発電所・パイプライン・通信設備・宇宙等インフラ投資、金融・製造・電子商取引・貿易・テクノロジー等アウトバウンド投資での決済を糸口に、抵抗力のないアフリカ諸国や太平洋島嶼国の日常生活における金融包摂を生み出すであろう。また人民元を主軸とした経済圏の出現やSWIFT(国際銀行間通信協会)ネットワークを必要としない国際送金システムの構築は、現行の米ドル基軸通貨体制を脅かし、米ドル建て取引を前提にした金融制裁の無力化を意図する。

 いまのところ中国は資本取引自由化に踏み切れず、人民元の世界での通貨流通量は米ドル44%、ユーロ16%、円8%、ポンド6%に比べ、わずか2%に過ぎない。しかし国家資本主義の威力で及ぼすデジタル人民元の国際化に対し、国際社会は通貨主権、経済安全保障の視座から捉え、我が国としても『デジタル円』の発行を展望すべきである。

 先般、CBDCの発行を視野に日銀や欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、スウェーデン中銀のリクスバンク、スイス国民銀行、カナダ銀行の6中銀と国際決済銀行(BIS)が参加する新組織がつくられ、米連邦準備理事会(FRB)も分析を進めている。

 デジタル通貨に関し、国際送金の即時決済を前提に、各国地域それぞれの経済速度に適応する金融政策が浸透でき、データの保護規則を共有しデジタル化への基盤技術を官民で作り上げていく、国際環境を整えることが重要である。

 ついては、ルール形成戦略議員連盟は、経済安全保障の視点から、我が国が早急に米国財務省・FRB・国家経済会議(NEC)と連携し、米国と欧州の同調を主導し、G7サミットにおいてデジタル通貨を経済安全保障としてのアジェンダとすることを求める。

ルール形成戦略議員連盟とは…

 世界市場では国家・企業に有利な競争のルールを巧みにつくることによって、市場を支配、あるいは代謝を図る熾烈な駆け引きが行われています。国際ルールや国際標準を主導的に形成することで、日本の進路を切り開くことを目的として設立した有志国会議員による政策研究会です。甘利明会長はじめ自民党国会議員70名超が参加、中山のりひろが事務局長を務め、政策研究・提言を展開しています。

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