ルール形成戦略議員連盟(甘利明会長)の事務局長として、標記の提言を作成し取りまとめ致しました。ご一読くださいましたら幸いです。

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我が国の安全保障の中核である日米同盟を前提に、日中経済関係は並存し混融することはできるのか、この地政学的、政治的リスクが本邦企業の活動に顕在化しつつある。

我が国にとって最大の貿易相手国である中国は、2028年には米国に匹敵するGDP規模が予測される。しかし、専制主義と国家資本をもとに支配領域の拡張と経済覇権へ挑む中国との経済活動が、我が国と普遍的価値を共有する国・地域の安全保障環境を毀損することは避けなければならない。

製造強国を目指す中国は、先端重要技術分野をはじめ国有企業を優遇する産業政策を進めてきた一方、国内市場への外資の参入障壁は存在し、今後、閉鎖的な制御はさらに強まると考える。米国は中国による強制的な技術移転、知的財産の侵害などに対し、厳格な輸出管理、外国投資審査の法体系を整え、EUはデータ・AI・人権など価値観に基づくルール形成を主導し、我が国も外為法、個人情報保護法、重要土地規制法など法整備を進めている。とりわけ、米国の重要技術・重要インフラ・機微な個人データに係る対中政策は、米国と取引する域外の本邦企業にも適用され、米国と中国双方での企業活動に影響をきたす。

我が国が国民の生命、財産、情報を守るとともに、我が国経済が成長軌道を堅固に進展するため、本邦企業における時代の要請に応じた安全保障に資する経済活動の予見可能性を官民一体で対話し、戦略的な協議をおこなうことが要諦である。

以下、官民で協議されるべき経済安全保障上の懸案と課題について例示する。

【懸案事項】

○ レアアース、基幹製品から汎用品におけるサプライチェーン再構築

○ データガバナンスやデータ流通上のデータ保護、及びサイバーセキュリティ対策

○ 外為法による外資規制や貿易管理の厳格運用

○ 研究開発情報や知的財産の管理、営業秘密に係る不正競争防止法の運用、及び人材管理

○ 中国法(国家情報法・輸出管理法・サイバーセキュリティ法・データネットワーク法・安可目録など)への対処

○ 米国法(輸出規制・投資審査など)が域外適用される企業取引や業務提携、資本取引

○ 中国市場の開放性、及び「第14次五か年(2021年~2025年)計画」への対応

○ 人権や経済安全保障に係るデューデリジェンス

【戦略課題】

○ 経済安全保障担当役員及び部署の明確化

○ 機密情報を取り扱う者の適格性の確認(セキュリティクリアランス)制度

○ 企業内の組織体制(米国と中国事業のデカップリング及びファイアウォール)の構築

○ 米国標準技術研究所に準拠するサイバーセキュリティ、情報システムの適用(NIST SP800-171) ○ 経済分野のインテリジェンスの必要性

○ 米中に共通し流通が可能な製品・サービスと制限される製品の細分化、ならびにパーシャル・デカップリングの実体化

○ 台湾海峡及び朝鮮半島情勢に適応する事業継続計画の検討

○ 公平・中立・透明な国際ルールと国際標準による支配

○ サイバー、宇宙、極地など新領域における国際競争力確保

○ 生命倫理、科学倫理、及び価値観を礎にした先端技術の社会実装

ついては、関係省庁と経済界ならびに学術界が一体となり、経済安全保障戦略課題を対話する協議会を早期に創設することを提言する。

加えて、本協議会が、個別の企業取引案件に係るデューデリジェンス、経済インテリジェンスにつき、必要に応じ、政府としての相談や支援の窓口となることを求める。

以上

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